8,まとめ

(1)地温について
飛騨の地温・地熱研究ということで、地表面から、地下1000m以上にわたって研究を行った。
 飛騨の地温は、基本的に地下深部ほど高く、その上昇率は平均的な地温勾配を示すことがわかった。しかし地表付近は、地下数mまで、地表面からの熱の流れの影響を強く受けていることがわかり、特にアスファルトや裸地では、その影響が大きいことがわかった。
 地下深くの地温の様子を探るため、猪臥山トンネルと野口トンネルで壁面温度観測を行ったが、すぱーふる温泉や、しぶきの湯のボーリングデータから得られた値との違いが大きく、十分な検証が行えなかった。
 しかし、安房トンネルでの観測では、興味ある結果が得られた。
 安房トンネルの壁面温度は、周囲の地質や地下水と調和的であることがわかった。
 また、地殻熱流量の測定から、十分とはいえないが熱流量を測定することができた。
(2)地熱の利用について
地熱の利用ということで、ヒートパイプを用いて基礎的な実験を試みた。
 実験では、メタノール、エタノール、水、の沸点の異なる3つの作動流体を用いた。
実験の結果、沸点のもっとも低いメタノールが、熱を効率よく長い距離運搬しやすいことがわかった。
(3)今後の課題
〔地温・地熱について〕
 今回の研究は夏休みを中心に行ったため、地表面温度が高い状態での観測であった。地表面温度が低下する冬季には、地温はどのような分布になるのであろうか。様々な深度で、地温の年変化を研究してみたい。さらにトンネル内壁面温度ももっと多くの観測点で継続して研究していきたい。

〔地熱の利用について〕    
 ヒートパイプの実験では、メタノール、エタノール、水の3つの作動流体を用いたが、もっと別の作動流体を用いて実験していきたい。また、作動流体の量の違いや、パイプの材質、加熱温度の違い等々、いろいろ試してみたい。
 さらに、これから冬季にかけて、実際に設置したヒートパイプの様子を観察していきたい。
(4)謝辞
今回の研究にあたり、実に多くの方々の協力を得た。
 まず、1m深地温観測のため、21名の田や畑の持ち主の方に快く観測場所を提供していただいた。
 古川建設事務所の方には、30m深ボーリング調査地点の観測や、野口トンネル観測に際し、いろいろとお世話していただいた。
 日本道路公団東京管理局松本管理事務所および、安房峠道路営業所の方には、安房トンネル調査に際し、特別のご配慮ご協力をいただいた。
 ナウエ(株)様には、観測移動用に小型バスを長期間にわたりご提供いただいた。
 金沢市のホクコク地水(株)様からは、ボーリング調査孔温度測定用の精密温度計をお借りした。
飛騨地域農山村整備事務所の方には、猪臥山トンネルの資料を提供していただいた。
 国府町、並びに古川町すぱーふる温泉の方々には、貴重な温泉ボーリングデータを提供していただいた。
 富山大学対馬教授には、ヒートパイプの実験についてご指導いただいた。
 本校森先生には、安房トンネル観測の際にご協力いただいた。
 以上、多くの方々のご協力があって本研究を完成させることができた。
 心より感謝いたします。
(5)参考文献
建設省中部地方建設局 高山国道工事事務所(平成11年11月)
「安房峠道路工事誌」

日本道路公団東京管理局松本管理事務所(平成14年)
「中部縦貫自動車道(安房峠道路)事業概要」

湯原浩三、小川逸郎(昭和49年)
「安房トンネル予定地における地温探査」
物理探鉱 第27巻 第6号

日本ヒートパイプ協会編(平成13年)
「実用ヒートパイプ(第2版)」
日刊工業新聞社

飛騨地域農山村整備事務所
「ふるさと林道緊急整備事業畦畑〜彦谷線猪臥山トンネル」

友田好文・松田時彦編
「高等学校地学TB」
啓林館
(6)研究者名簿
個人情報保護のため実名は公開しません。

平成14年度 地学部員

(1年生 3人) (2年生 8人) (3年生 1人) 以上12名がこの研究に参加しました。