(1)研究の動機 |
私たち地学部は、これまで「飛騨の自然の解明」をテーマに研究を継続してきた。 昨年度は、『飛騨における地震予知の研究』というテーマで研究を行った。 飛騨に存在する日本有数の活断層の一つ、跡津川断層を対象に、主に断層ガスにより地震予知ができないかを探る一方、地域住民の方々にアンケート調査を行い、地震に対する知識や備えなどを調査し、総合的に研究を行った。 ところで、地震の発生メカニズムの大部分は、地下の岩盤にひずみのエネルギーが蓄積し、それが限界に達したとき急激に破壊し、断層運動が生じることにより発生すると考えられている。そしてこの地震エネルギーの源は、地球内部の熱エネルギーであり、地球深部の高温部分からもたらされたり、岩石中に含まれる放射線元素によってもたらされる。 放射性元素については過去の研究『飛騨における自然放射線の研究』で行ったことがあるが、ほとんどの岩石、特に火成岩や変成岩に多く含まれることがわかった。 さてこの地球内部の熱エネルギーは、地震を引き起こすだけでなく、火山活動を起こしたり、私たちに温泉の恵みをもたらしてくれる。 飛騨には、白山、焼岳、乗鞍岳、御岳と、4つもの活火山があり、これらの周辺には平湯温泉など多くの温泉地が存在する。 さらに、近年の村おこし町おこしによって、火山地帯から離れたここ古川町や高山市、国府町、宮川村などに新しい温泉がオープンした。これら火山から離れた温泉は、すべて1000m〜2000mの深さから汲み上げられていて、火山地帯でなくても地下深部では地温が高いことを示している。 また、地温に関係して私たちが身近で実感することの一つに地下から湧き出す湧水の温度がある。湧水は夏は冷たく、冬には暖かく感じる。これは湧水温が年間を通じてほぼ一定であるためといわれ、地表近くの比較的浅い部分の地温が、年間を通じてほぼ同じことを示すと思われる。どのくらいの深さまで地温は一定で、どの程度の深さから地球深部からの熱の影響を受けるのだろうか。 地下の温度分布や地熱の流れはどうなっているのだろうか。 このような疑問から、飛騨の地温や地熱について研究を始めることにする。 |
(2)研究の目的 |
動機で述べたように、今年は飛騨地域の地温・地熱について研究を行うことにする。 研究を行うに当たり、研究の目的を大きく3つ設ける。 @ 1つは、地表面から地下深部にかけて、地温分布や地熱の流れがどのようになっているのかを明らかにすることである。地中深くでは温度も高く地球内部からの熱の流れ(地殻熱流量)も大きいと考えられるが、地表付近は地形や気温の影響も考えられる。そのあたりを詳しく調べてみる。 A もう一つは、地殻熱流量を求めることである。地殻熱流量の測定には、地表の影響があっては測定できない。地表からどれくらいの深さまで地表の影響があるのか詳しく探り、地殻熱流量を求める。 B 最後は、地熱の有効利用である。 地熱は、地熱発電といった大がかりなものから、私たちの身近なところでは、冬季の積雪時に道路の融雪に地下水として利用されたりしている。 融雪などの地熱利用技術の一つにヒートパイプというのがある。ヒートパイプとは、熱を有効に運搬、利用する装置の一つである。 実際にヒートパイプを作成し、地熱の有効利用について研究してみる。 |
(3)仮説の設定 |
動機で述べたように、今年は飛騨地域の地温・地熱について研究を行うことにする。 研究を行うに当たり、研究の目的を大きく3つ設ける。 @ 1つは、地表面から地下深部にかけて、地温分布や地熱の流れがどのようになっているのかを明らかにすることである。地中深くでは温度も高く地球内部からの熱の流れ(地殻熱流量)も大きいと考えられるが、地表付近は地形や気温の影響も考えられる。そのあたりを詳しく調べてみる。 A もう一つは、地殻熱流量を求めることである。地殻熱流量の測定には、地表の影響があっては測定できない。地表からどれくらいの深さまで地表の影響があるのか詳しく探り、地殻熱流量を求める。 B 最後は、地熱の有効利用である。 地熱は、地熱発電といった大がかりなものから、私たちの身近なところでは、冬季の積雪時に道路の融雪に地下水として利用されたりしている。 融雪などの地熱利用技術の一つにヒートパイプというのがある。ヒートパイプとは、熱を有効に運搬、利用する装置の一つである。 実際にヒートパイプを作成し、地熱の有効利用について研究してみる。 |
(4)研究の目的 |
仮説の検証のため、以下のような方法で研究を行う。 まず、地表面の温度分布を調べ、地形などによる違いや、時間的変化などを探る。 次に、実際に地面に穴を掘り、浅い部分の地温分布を調べ、地温や気温との関係や時間的変化を探る。 さらに深い部分の地温については、既設のボーリング孔やトンネルを利用して地温測定する一方、温泉ボーリングデータなどを収集し調査する。 地熱の有効利用については、基礎実験としてヒートパイプを作成し、どのような条件で効率よく熱を運ぶかを探ってみる |
(5)調査フィールド |
今回研究を行った全観測点を、フィールド図に示す。 今回は、古川盆地内のみならず、遠く安房トンネルまで行き観測を行った。 |
研究に用いた観測機器
センサーコード付 デジタル温度計 |
放射温度計 |
アスマン乾湿計 | 精密温度計 |