-飛騨の朝霧の研究V−
1.研究の動機 飛騨の盆地は霧が多い。山裾にある本校はなおさら霧に包まれることか多い。この身近な霧に興味を持ち、4年前から研究を始めた。 2.研究の経過・目的 昨年までの研究で.朝霧は3つに区分(霧・朝曇り・川霧)され,各々異った発生時期やメカニズムを持つことが明らかになった。この成果の上に立って朝霧の性質や予知の研究を開始した。しかしデータ不足等もあって十分な成果が得られなかった。今年は昨年の研究を継続・発展させ,次の4つの目的をかかげて研究を行った。@朝霧の発生時の条件 A朝霧の予知 B朝霧の性質の年変化とその原因 C冷気湖と朝霧の関係 3.研究の方法と流れ図 仮説・検証を繰り返しながら研究を進める方法をとった。これは今までと全く同じである。研究の過程を図1に示した。なお昨年用いていた朝霧の名称を分類基準がわかりやすいように改めた。すなわち,霧を低い霧,朝曇りを高い霧と呼ぶことにした。川霧は従来どおりである。 4.研究の内容 (1)朝霧の発生する条件 水温・気温と朝霧の種類との間には昨年と同様の関係がみられた。また気温較差・地温較差との関係では,較差が大きい程霧の発生しやすいという仮説に合う月と合わない月があった。従って較差も一つの条件であるが他の条件(霧の種類・季節・盆地の形など)も考えに入れる必要があろう。気温・地温との関係から,霧の発生は盆地の底が冷え.冷気がたまるためであるということが明らかになった。 (2)朝霧の性質は何で決まるか 発生高度:上限高度は平地から300〜400m付近に集中する。これは盆地の周囲の山の高さに関係しているためと考えられる。盆地という凹地状の中に霧が発生するということを示している。一方,下限高度は地温較差・気温較差と負の相関関係があるという仮説に反し,平地からOm及び200m付近に集中していることが明らかになった。この事から,低い秀と高い霧は明確に区分され得るということがわかる。そして両者は、別の発生メカニズムを持っているということになる。また各季節の一般的な気圧配置と異なる場合には、下限高度が各季節の一般的傾向と大きく異なるということも明らかになった。消滅時間:気温が高い程早く消滅するという仮説は実証された。また日の出とともに気温が上昇して霧が消滅するという仮説をたて、日の出時間と消滅時間の関係を調べた結果,両者にはきれいな相関関係が認められた。仮説が正しかったことになる。 (3)朝霧の発生は予知できる 昨年の方法ではうまく予知できなかった。そこで今年は新しく15時から21時までの気温降下率(℃/h)及び15時の湿度と翌朝の霧発生の関係を調べた。その結果,図2のように霧の発生確率が求まった。なお,この方法は霧の他,晴れ,雨、雪の予知にも有効である。 (4)冷気湖と朝霧 以上の研究から、霧の発生には盆地内に形成される冷気湖が重要な意味を持っていると考えられる。この仮説を,盆地内の気温勾配(℃/100m)と霧,古川と神岡の気温勾配の対照研究によって実証した。さらに、盆地が一望できる安峰山を利用し,海抜が540m,940m,1056mの各点で気温・湿度,天気等の徹夜観測を実施した。そして冷気湖の形成過程と霧の一生の様子を観測することに成功した(図3)。その結果,冷気は山頂から山麓へと流下し,ふもと程気温降下量が大きいこと等がわかった。 |