放送衛星よりケプラーの法則を検証する
1.研究の動機 2台のテレビで衛星放送と総合放送の同一番組をみていて,衛星放送の方がわずかに遅れて届いていることに気がついた。どうしてこのようなズレが生じるのか疑問に思い,研究してみた。 2.研究の目的 (1)衛星放送が総合放送よりも遅れて届くのは,電波が地上と放送衛星の間を往復する時間差によるものと考えられる。そこで,その時間差と電波速度から放送衛星までの距離を求めてみる。 (2)放送衛星は,月と同じように万有引力により地球の周りを公転している。天体の運行は,ケプラーの法則に従っている。求められた放送衛星までの距離と,放送衛星の公転周期からケプラーの第三法則(調和の法則)を検証することができるであろう。この2点が,この研究の目的である。 3.研究の方法 衛星放送と総合放送の同一番組(例えば7時のニュース)の音声を,テープレコーダーのR側,L側それぞれに録音しデータとする。このテープを使って,両放送の時間差を以下の4つの方法で求める。 (1)直接耳で聞き分ける方法 (2)2ペン式ペンレコーダーによる測定 (3)コンピュータによる測定 (4)2チャンネル式オシロスコープによる測定 4.研究の内容 全体の仮説 衛星放送と総合放送とのズレは,衛星放送の電波が衛星まで往復する時間のみによる。よってその時間差から衛星の高度が求められるだろう。また,その値と公転周期からケプラーの法則が検証できるだろう。 データ 衛星放送と総合放送の同一番組をテープレコーダーのR側,L側それぞれに録音し,データとする。 (1)時間差の測定 同時に録音した音声データを,以下の方法で解析し,両放送の時間差を求める。 @ 耳で聞き分ける方法(屋外) 衛星放送の音声を耳元で開きながら,総合放送側のスピーカーをだんだん遠ざけていき,両方が同時に聞こえる距離から時間差を求める。 結果 本校駄車場にて,大気が安定している早朝に測定。両スピーカーの距離は79.8mとなり時間差は,0.23084秒と求められた。 A 耳で聞き分ける方法(室内) @の実験は屋外で行ったため,風の影響などにより,聞き取りにくいことがあったので,室内で再度実験してみる。 結果 本校では,直線距離で80m程度をとれる場所がなかったので,莫大高校の廊下を借りて実験したところ,両スピーか−の距離は82.5mで時間差は.0.23618秒と求められた。 B 2ペン式ペンレコーダーによる測定 耳で開く方法では,誤差が大きいと考えられるので2ペン式ペンレコーダーを用いてみる。 結果 ペンレコーダーのペンの動きは,音声波形を捉えられないことが分かり,失敗。 C コンピュータを使って測定 A/Dコンバータで,音声信号をデジタル変換しコンピュータにて解析を行う。解析にはA/Dコンバータに付属のソフトを用いる。 結果 使用したソフトは,1/1000秒ごとに音声信号を読みとることができる。これにより,時間差は,0.247秒と求められた。 D 2チャンネル式オシロスコープによる測定 さらに正確に両放送の時間差を測定するため,2チャンネル式オシロスコープを用いて解析してみる。 結果 時間差は,0.249秒と求められた。 (2)地球中心から放送衛星までの距離を求める 以上の実験から求められた時間差より,放送衛星の高度を求め,さらに地球の中心からの距離に変換する。 @より,39527.43km Aより,40322.22km B失敗 Cより,41932.30km Dより,42230.04km (3)ケプラーの第三法則の検証 ケプラーの第三法則(調和の法則)とは, a3/T2=G・M/4方2 ここで,a:惑星と太陽間の距離,T:惑星の公転周期,G:万有引力定数,M:太陽質量で,この法則は惑星と衛星の間にも成り立つ。それぞれの実験で得られた地球の中心から放送衛星までの距離と,公転周期(23時間56分4秒)を,上記の式に代入して,ケプラーの第三法則を検証してみる。G・M/4方2=1.010700×1013(彰より,a3/T2=0.831848×1013 Aより, =0.883042×1013 Cより, =0.993088×1013 Dより, =1.014408×1013 どの値もほぼ成り立つ。よって,ケプラーの法則は検証された。 5.研究のまとめ 衛星放送と総合放送のズレから,衛星の高度が求められ,さらにその値をつかって,ケプラーの第三法則を検証することができた。実験には,コンピュータや,オシロスコープなども用いて測定精度を上げたが,最初に行った,衛星放送と総合放送を直凍聞き比べ,時間差を求める方法は,簡単な方法ではあったが,意外と正確な値を得ることができた。 |
(岐阜県児童生徒科学作品展「科学の芽」より)
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