飛騨盆地における視程の研究 U
1.研究の動機 古川盆地の天気は,様々に変化していくが,昨年は,特に盆地内の視程について研究した。視程は,盆地内の気温の鉛直分布や,風,湿度などと関連かあることが分かってきた。今年は視程を左右すると考えられる微粒子量に注目し,研究してみた。 2.研究の目的 昨年の研究で,視程の変化と気温の鉛直分布,風力,湿度等との関連が明らかになってきた。特に盆地内に冷気湖が形成されたときに,視程が最も悪くなることが分かった。しかし,データ数が少ないことや,視程の判定が難しいことなどからい〈つかの疑問点が残った。本年は,次の点に焦点をあてて研究を行った。 (1〉 視程の判定をより客観的にする。 (2)視程を決定する要因と考えられる微粒子をとらえ,その量と他の気象要素との関係を探る。 3.研究の方法 これまでのように,仮説一検証法により研究を進めた。視程の記録は,昨年は休み時間ごとに行い,その判定は呂で見て判断する方法をとっていた。しかし観測者の主観的判断になりやすいため,今年は朝,夕2回写真撮影を行い,視程の程度を6階級に分ける方法をとった。この方法により視程がより客観的にとらえられるようになった(図1)。階級は次のように定めた。 A(250m未満), B(1,500m未満)C(2,500m未満),D(5,000m未満)E(10,000m未満),F(10,000m以上) 気温の測定は,昨年同様安峰山中腹(標高760m),本校校庭(標高560m)、古川ノJ、学校校庭(標高500m)で自記記録計によって行った。微粒子量の測定には粉塵計を使用し,24時間観測のとき測定した。これらのデータは,コンピュータによって処理し,解析した。 4.研究の内容 (1)昨年の研究 目的:盆地内での視程の変化を解明する。まとめこ気温の鉛直分布が正常状熊のとき視程がよく、逆転状態のときは視程が悪い。今後の課題:視程の階級化により客観性をもたせる必要がある。 (2)今年の研究 目的:視程を決定する要因をつかむ。全体の仮説二視程を左右するのは大気中の微粒子量である。視程の良いとき一徹粒子量が多い視程の悪いとき一徹粒子量が少ない 検証:昨年の研究同様,盆地内の気温,湿度,風,気圧配置と視程との関係を調べたところ,ほぼ昨年の結果を裏付けるものとなった。 @ 微粒子をとらえる 目的:実際に大気中の微粒子量を測定し,気温の鉛直分布や風との関係を探る。 仮説1:風力が大きくなると微粒子は拡散し,微粒子量は減少する。 検証1:風力計の値を用い検証。風力と微粒子量との間に負の相関関係成立。仮説は成り立つ。 仮説2:気温の鉛直分布が正常状態一対流さかん一徹粒子量減少気温の鉛直分布が逆転状態一徹粒子滞留一徹粒子量増加 (図2) 検証2:山頂,二十五菩産,本校の気温データを用いて検証,夜間逆転層の形成とともに微粒子量増加。仮説は成り立つ。 仮説3:微粒子量は畳少なく,夜多い。 検証3:検証2と同じくほぼ仮説は成り立つ。 A 新たな視程の測定方法を求める。目的二視程の数値化はできないだろうか。レーザー光線の透過度による研究 仮説4:視程が悪ければ微粒子量が多いのでレーザー光線の透過度が小さくなる。 検証4:校舎間で測定したが顕著な結果得られず。今後装置の改良の必要あり霧水サンプラーによる霧水量の測定 仮説5:秀発生時,霧が濃いほど霧粒量が多い。 検証5:霧水サンプラーによって覆水収集。データ量不足今後データの蓄積必要 発展:覆水の酸性度,含まれる微粒子の分析 5.研究のまとめ 視程階級を確立したことにより細部にわたって考察することができるようになった。これにより,視程を左右するものは,大気中の微粒子量であることがはっきりした。逆転層が形成きれているときが微粒子量が最も多くなりやすく,視程が悪くなる。今後さらにデータを蓄積するとともに,微粒子の粒径変化などについて研究を深めていきたい。 |